【クラクラ小説】


「きりーつ、きをつけー、礼!」
『さよーならー』

 いつもする普通の挨拶。
....陽斗にとっては最後の挨拶だった。

 いつもの放課後は
「陽斗ー、今日はどうする?」から始まる。

 でも今日
「ごめん、用事があるから今日はパスで。」

 そう言って、一足先に帰路につく。
上を向きながら


 僕..陽斗は中学3年の15歳。
もう広葉樹の葉が散り始めていた。


「..ただいま。」

 もう家の前にはトラックが止まっていて、ダンボールを積み始めていた。

「おかえり...ちゃんと友達に言えた?」

 母は静かな声で僕に聞いた。

 僕は
「ううん。」とだけ答えると

 母は「...そっか。」
「もうそろそろ車に乗ってね。」
それだけ言って、もう何も言わなかった。


 ーーもうこの街に来る事はないんだな。
 ーー皆とはもう会えないんだな。

 そんな事を車に揺さぶられながら考えていると、いつの間にか泣きながら眠りについていた。


「陽斗、陽斗、起きてついたよ。」

 ふと気づいた時にはもう知らない場所に着いていた。

 周りには田んぼだらけで見渡す限り背の高い建物は見当たらなく、夜の虫の声が四方八方から聞こえてくる。

 ーーここで暮らすのか...

 不安しかなかった。全く知らない場所で友達もいない。こんな環境で受験は大丈夫なのか。色々なことで頭がいっぱいになる。

 それでも、
『頑張ろう』

 そう自分に言い聞かせた。


 ピロリンッ♪

 そういえば何時間も携帯触ってなかったな。

「...ん」

 携帯を見てみると友達からだった。

「陽斗ー!早く開戦しろよー!」

 前の対戦はもうとっくに終わっていた。

「ごめん、ごめん。忘れてた」

「しっかりしてくれよ〜」

 ーーそっか。僕は1人だけどクラクラだったら1人じゃない。良かった。まだ1人じゃなかった。

 そう思いながら

『開戦ボタンを押した。』


 陽斗はサッカー部で作ったクランのリーダーをしていて、クラメンは20数人。チャットは賑やかで勝率は7割といった良いクランだった。


「自分、2番攻めるね〜」

 ーーチャットでは元気よくやらなきゃ。

「お、陽斗2番攻めるのか、いつ攻める?」

「んー、もうちょい待ってて〜」


 プランは決まった。
『対戦用ホグお願いします。もうそろそろ攻めるよ。』っと。


 結果は星1、59%。いつも全壊できるのに。何も上手く行かなかった。

「あれ?珍しいじゃん、th9同格で陽斗が星3取らないの。」

 ーーしっかりしなきゃ。

「悪い、事故ったw」
「次は全壊するよーー!」

 と自分に言い聞かせるようにチャットを打った。


 その日の夕食はカレーライスだった。
食欲の...と言われる季節なのに大好きなはずのカレーを食べる気になれなかった。


to be continued...